|
自身が体感した共感、その輪が広がっていくことが活動を続ける理由。
―荒木さんがこの活動に参加するきっかけはどういったものなんでしょうか?
荒木さん:チャレンジワーク新潟の前身の活動である“ぷれジョブ新潟”について、支援学校の先生や周りの保護者の方から紹介されたのが始まりです。実際に参加するまでは、「みんながやれって言っているからしょうがないか」みたいな気持ちでした。ただ、実際に参加してみると、いろいろな人が関わる部分にすごく共感をして、どんどんはまっていったという感じがしています。
―どんな部分に共感されたのですか?
荒木さん:実際に活動に参加した方がよく話されるのは、「こどもたちのお仕事を通じて、周りの人に気づきや共感が広がっていく」ということです。関わることで“あったかい気持ちになる”と言われることも多くて、今、自分がこの活動をやっているのも、この活動を通して周りが変化していく様子を感じられること、それが楽しみというか、一つのやりがいになっていますね。
―活動はどのように進められるのですか?
荒木さん:週に1回、1時間のお仕事体験を半年間継続します。半年経つと、基本的にはお仕事先も変えて、サポーターさんも変わります。そして、どんどん人のつながりを広げていきます。お仕事体験は行いますが、就労を目的とした活動ではありません。この点はみんなで共通認識を持つにしています。ですので、サポーターさんは専門家ではなく、地域の方ならどなたでも参加できます。
―月に1回定例会もあるとお聞きしていますが?
荒木さん:月1回定例会は、活動の“肝”だと感じています。ここでは、こどもたちが「今月はマリンピアでこんなお仕事をしたよ」と話したり、一緒に活動しているサポーターさんからお話を聞いたりして、いろいろな声が集まります。その声が、こどもにとっても大人にとっても刺激になり、関係性が少しずつ育っていく場になっていると思います。
―お互いの声を聞きあうことで関係性も変化していくのですね。
荒木さん:(活動の様子が写ったパンフレットを見せながら)ジョブサポーターの協力者の方がこんな楽しそうな表情や仕草を見せてくれるんです。お仕事体験を通じて、周りの大人がこんなふうに変化していく姿こそ、この活動の魅力だと思っています。そこを一番お伝えしたいですね。
「ぼくの仕事は地域のみんなをつなぐこと」、これこそが合言葉。

―お仕事体験を通じて地域をつなぐという言葉がそのことを指しているんですね。
荒木さん:実は、活動してきた中で、みんなで大事にしてきた“合言葉”があります。「ぼくの仕事は地域のみんなをつなぐこと」という言葉です。まさに、この一言がチャレンジワーク新潟の考え方を表しているんです。
―活動の指針とされている言葉なんですね。
荒木さん:ただし、最初の説明会の時とかに、いきなり「ぼくの仕事は地域のみんなをつなぐこと」とお伝えしても、初めて参加した人にはちょっと伝わりにくいのかなと思っています。だからホームページでは「お仕事体験を通じて地域をつなぐ」という形で言葉を掲載しています。
―実際に周りの方が変わったなというエピソードはあったりしますか?
荒木さん:ジョブサポーター向けの説明会に参加した当初は、「忙しいから最初の30分だけです」と言っていた方が、活動が始まって実際に続いていく中で、各地で開催している説明会の説明者側に変わっているなんていうことがあります。それも活動に共感してくださっているからだと思っています。
―活動への共感はどのように生まれていると考えていますか?
荒木さん:こどもたちに実際に関わること、普段なら見過ごしてしまいそうな小さな頑張りや変化に気づけたりして、こちらが嬉しくなったり、感動したりすることが本当に多いんです。こうした経験が、大人の側にも新しい気づきや変化を生んでいくのだと思います。
活動の輪が広がることで、変わっていくものがある。

―チャレンジワーク新潟の活動の場は関わる方にとってどんな場になっていますか?
荒木さん:地域そのものが“居場所”になっていけたら、という思いがあります。どこか場所を設けて居場所と囲い込むのではなく、地域に出ていくことで、居場所と感じられるような環境になったらいいなと思っています。
―そういった環境づくりを目指しているんですね。
荒木さん:チャレンジワーク新潟の活動の場以外で、お子さんとジョブサポーターさんが会った際に声をかけてくれたのが嬉しかったという話を聞くと、そういった関係性につながっていくところも活動の魅力なのかなと感じています。
―関係性の広がりを感じますね。
荒木さん:そうやってこどもたちと地域の顔がつながり、関係性が広がっていくと、これまでと違ったものが少し見えてくるのではないかなと思っています。それが今後の期待というか、楽しみの部分でもあります。
―活動を通じて変わっていくものがあるのですね。
荒木さん:アンケートのコメントの中で「この活動をやっている人たちはみんないい人だから」というものがありました。ただ本当にいい人かどうかはわからないです。私もこの活動に関わるまで全然こういうことはやってきてなかったんで。でも、私も含めてみんながこの活動に関わることによって、変わった部分があり、そのことでそういう人に見えるようになったのかもしれません。そんな気がします。
―今後、活動をどのようにしていきたいですか?
荒木さん:お仕事体験や定例会を通じて、子どもたちの成長や魅力が少しずつ引き出されていくところが、私自身の期待であり楽しみでもあります。これまでにも、「この活動をきっかけにこどもが大きく変わった」という声を保護者の方からいただいたり、さらに「かつて参加していた子が、今は元気にこんなふうにすごしています」といった近況が届くこともあります。そんなふうに、つながりが続いていくことがとても嬉しいんです。チャレンジワーク新潟の活動は各地域で取り組んでいますが、これからもっと、つながりながら広がっていくことで、この活動に関わる人たちの「見えてくる世界」が、どんどん豊かになっていくことを期待しています。
≪今回マリンピア日本海で活動しているお子さんの保護者の方にも伺いました≫

―この活動に参加するきっかけはどういったものですか?
保護者:仕事には向き不向きが絶対にあると思いますので、「働くとはどういうことか」「自分が向いてるのはどういうことなのか」を理解してもらう機会があったらいいと思って参加させてもらいました。もしかしたら、楽しいと思えないものや、働くのは大変と思うこともあるかもしれないけど、それも一つ得るものなのかなと思っています。
―参加するにあたって不安はありましたか?
保護者:チャレンジワーク新潟さんが事前に希望を聞いてくださり、今回は自宅から近い馴染みのある場所での活動となりました。不安はもうなくて、企業さんも本人の特性にあった配置をしてくれているので。仕事の体験をするということ自体は特に不安はなかったです。
≪一緒に活動したジョブサポーターの方にもお話を伺いました≫

―(参加はこの日が初めて)参加されてみていかがでしたか?
ジョブサポーター:もっともっとチャレンジワーク新潟の活動が広まって、こどもたちが体験できる場が増えていけばいいなという気持ちが高まったし、色々な活動に参加してみたいと思いました。
≪受け入れ企業の担当者の方にお話を伺いました≫

マリンピア日本海の斎藤課長(左)と新潟ビルサービスの大野課長(右)
―チャレンジワーク新潟の活動を受け入れるきっかけはありましたか?
斎藤課長:元々、チャレンジワーク新潟の活動を知っていたわけではなかったのですが、荒木さんの方から受け入れの提案をいただき、詳しい話をお聞きする中で、水族館としても何か役に立てることはないかと思ったことがきっかけです。
―お仕事体験の内容はどのように決めたのですか?
斎藤課長:どんなことが協力できるかなということで色々考えた中で、飼育に関係することだと結構危険な部分もあるので、それで清掃ならどうかということになりました。
―新潟ビルサービスの方にはどのように話がありましたか?
大野課長:当社はマリンピア日本海の清掃業務をアウトソーシングされている会社でして、斎藤課長から話をいただき、その思いに協力したいと共感しまして、会社としても手伝っていただこうという流れになりました。
―活動をスタッフの方はどのように受けとめていますか?
大野課長:清掃スタッフは、このマリンピアという施設を綺麗にするというメンバーの1人として活動するお子さんのことを認識をしています。
―マリンピアの中では、この活動をどのように受け止めていますか?
斎藤課長:職員に対しては、こういった活動をしているよということは周知していますし、社会貢献や地域の居場所づくりなどの部分で貢献していけたらいいなと更に感じるようになりました。
―企業としてはチャレンジワーク新潟の取り組みをどのように受けとめていますか?
大野課長:企業が直接受け入れるのではなく、段階的アプローチとしてチャレンジワーク新潟が機会を作ってくれることで、受け入れのしやすさにつながる部分だと思います。

『インタビュアー感想』
黒井亜美さん:今回取材させていただいた中で、子どもたちと企業の繋がりがこの“お仕事体験”から作られている光景を、実際に目の前で見たことが特に印象に残っています。活動に参加する子どもたちが自身について自己理解を深めたり、普段あまり接しない社会の大人と関わったりすることで、成長しながら少しずつ社会に踏み出しているのだろうなと思うと改めて「チャレンジワーク新潟」様の行っている活動は素敵なものだなと感じました。
これから子どもたちが新潟という地域でたくさんの人と出会い、温かい繋がりを結んでいってほしいなと思います。今回、取材の依頼にご協力いただいた皆様、そして本記事の作成・取材の指導をしてくださった中央区社会福祉協議会・中央区ボランティア・市民活動センター様の皆様へ心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
東海林茜さん:今回、初めてこのようなインタビュー・記事の作成をさせていただきました。質問事項を作ること等、基礎から社会福祉協議会の方に教えていただき、とても良いものができあがったのではないかと思います。また、今回はチャレンジワーク新潟へインタビューをさせていただきました。私は元々、チャレンジワーク新潟の活動自体は知っていましたが、どのような思いで活動を行っているのか、さらに、保護者の方からの思い等、活動を知っているだけでは、知ることができないようなところまで知ることができました。今回はインタビューという形で関わらせていただきましたが、今後はぜひ活動にも協力させていただきたいです。
拙い記事ではあったと思いますが、読んでいただきありがとうございました。また、ご協力していただいた皆さまにも感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
チャレンジワーク新潟
電 話:090-1533-3278(事務局荒木さん)
メール:cw.niigata@gmail.com
|